20世紀前半に活躍したフランスの工芸家ルネ・ラリックは、1910年頃からガラス工芸の制作に携わり、アール・デコの時代と呼ばれる1920~30年代に当時を代表するガラスメーカの経営者として世界的な名声を確立しました。ラリックは、外洋を航海する豪華客船や旅客列車の内装デザインを受注して、随所に装飾ガラスを用い、清楚で洗練された室内空間を演出して高い評価を得ました。ラリックのデザインの特徴は、古典古代彫刻に通じる調和とバランスを重んじた造形に、現代的なスピード感や明快さを盛り込んだ点にあります。意識的に色彩の使用を制限して、造形の彫刻的な表情を重んじた透明なガラスが醸し出す、繊細で幻想的な世界を心ゆくまでお楽しみいただくものです。
前期と後期の2部にわたり、ラリックの代表作150余点を公開いたします。