鹿児島市立美術館は、九州内にまだ公立美術館がない1954年にオープンしました。その時に初代館長として東京から招かれたのが、谷口午二(1894-1987)です。鹿児島市出身の谷口は、東京美術学校西洋画科で黒田清輝、藤島武二、和田英作といった鹿児島出身の教授陣に直に指導を受け、卒業後もその親交は続きました。美術館が開館する以前は、早稲田工業高校などで美術講師を務めていましたが、就任後は帰鹿して職務に専念し、名物館長として活躍しています。1965年に美術館顧問となったあとも、鹿児島の美術界の中心人物として親しまれました。
今回の展覧会では、初代館長・谷口午二の業績を三つの側面から検証します。一つは、収集家としての側面です。多くの作家たちや関係者との交流のなかで、コレクションされた作品を紹介します。二つめは、随筆家としての側面です。時事的な美術批評なども記していますが、最もよく知られているのは「午二放談」に代表されるような、郷土作家たちに関するユーモアあふれるエッセイでしょう。今回はその一部を紹介します。三つめは、画家としての側面です。若き日には、鹿児島初の洋画団体・金羊会を主宰し、また、光風会展などにも出品し、活躍しました。谷口の作品や仲間たちの作品も紹介します。
当館の礎を築いた谷口午二の没後30年を記念し、その業績を多面的にご紹介する展覧会です。