我が国の7世紀から8世紀にかけての時代は、大きな変革期でした。中央集権を目指した古代国家は、地方社会をその枠組みに取り入れようとし、地方の有力豪族たちも在地における権力維持のために、積極的にそのシステムに取り込まれていったように見えます。一方この時代には、有力豪族たちの支配の象徴も、それまでの古風築造から寺院建立へと大きく変化しました。そしてこれら国家と地方社会の動きは、いずれも奈良時代の律令国の成立を考える上で重要なポイントであるといえるでしょう。
そこで本展では、この時代を中心に特に地方社会のなかでも直接的に在地支配にかかわる郡の役所と、さらに各地に建立された寺院に焦点をあて、古代の社会を考えてみたいと思います。あわせて近年市内で調査が進んでいる推定橘樹郡衙や、7世紀末に建立されたとされる影向寺の資料も展示し、他の地域と比較をしながら川崎の古代についても紹介します。
なお、現在学校5日制の導入や、経済不況に伴うあらゆる面で博物館・美術館は、大きな曲り角にきています。特に地方・地域に所在する館ではいかに来館者のニーズに応え、また博物館・美術館としてどうあるべきか、いま新しい運営が期待されると共に、館内でも試行しているのが現状です。
そこで今回の展示では、地域を越えたかたちで、府中・横浜・川崎と3館が連携し、同じテーマのもと展覧会を催すものです。これまでの巡回展とは違い、ほぼ期を同じくして同テーマで開催することは、来館者にとっても幅広い視野で学ぶことができ、また一方館同士にあってもあらゆる相乗効果が期待されるところです。これからの地域博物館の方向性の一つの試みとして開催するものです。
ぜひご覧下さい。