およそ2500年ほど前、シャカ族の太子として生まれ、何不自由なく暮らしていたシッダールタは、人の老・病・死という苦しみの場面に行き会い、29才で出家します。
古代インドの宗教観では、人間の内には永遠不変の霊魂(「我」)があり、死後、この「我」は「輪廻」するとされていました。シッダールタは、人間の苦の原因がここにあるのではないかと、出家後6年もの間考察し続け、ついに「我」を否定し、輪廻から解放されるべきであるという「無我」の答えを見出しました。このときから、シッダールタは目覚めた人を意味するブッダ(仏陀)と尊称されるようになりました。また後に、シャカ族出身の聖者という意味のシャカムニ(釈迦牟尼)ともよばれるようになります。釈迦は弟子たちに対し、説法という形でこの答えを教え続け、80才で亡くなります。仏弟子たちは、釈迦の教えを「仏の智慧」として信仰し、伝承していきました。
本展示では、のちに釈迦や仏弟子たちを偲び製作された美術品や経典類など約50点を通じて、仏教の初期の姿を紹介します。釈迦の生涯と思想、そして仏弟子たちの果たした役割などから、本展が「仏教」を知るきっかけとなれば幸いです。