岡村桂三郎(1958 生)は、20代で山種美術館賞優秀賞を受賞するなど早くから頭角を現し注目されてきました。その独特な造形は、バーナーで焦がした巨大な杉板に方解末を塗り重ね、木炭でモチーフの形をとり、その中をスクレーパーで削ってうろこ状にするという特異な手法により生み出されています。こうした造形行為によって、従来の日本画にはない物質感や重厚な存在感を獲得した岡村は、2004年芸術選奨文部科学大臣新人賞、2008年第4回東山魁夷記念日経日本画大賞、2012年第18回MOA岡田茂吉賞MOA美術館賞を受賞するなど、現代の美術界をけん引する気鋭の作家として活躍しています。
屏風状に連ねた巨大な杉板のパネルに描かれるのは、象や鳥、獅子や巨大な魚のほか、龍や迦楼羅などの想像上の生き物で、不思議なうごめきを感じさせるその形態は、圧倒的な生命感をもって観る者に迫ります。こうしたイメージを生み出す岡村は、人間の営みや風土に根差した体験、感覚を大切にすることで、自然と人間の接点に美術や宗教が存在するという考えに至り、自然界がもつ生命力や、その形態のゆたかさに着想を得て、制作に注力しています。
本展は、2008年に神奈川県立近代美術館で開催された個展以来、県内では10年振りとなる大規模な個展で、充実した活動をみせる岡村桂三郎の、今回の個展のために制作された新作のほか、岡村の画業の変遷を確認できる旧作・近作を含む30点を紹介します。自然と人間との交感を想起させる世界観をお楽しみください。