ものが大量に生産され消費されるのが現代社会です。しかし少し前までは、身の回りのものの多くはまず手作りされ、既製品であっても痛んだり壊れたりすると、部分的に手直ししたり、修理したりして人々は使い続けました。「使い込んだ」のです。時間や手間のかかることでしたが、当時の人にとってはごくありふれたことでした。「もったいないから捨てずに使う」ということもありますが、そのものをいとおしく思い、使う人の思いがそこに込められていたのです。結果的に、そのように使われたものは何とも言えない味や深みのある顔つきになっていきました。
本展では、これまで生きてきた人々が暮らしの中で、小さなこだわりと大きな愛着をもって使い続けたもの、そして今なお使い続けているものを展示し、むかしも今も変わらぬ、ものに対する人の気持ちや日々の暮らし方を考えたいと思います。