紀伊半島に位置する高野山は、弘法大師空海が熟慮のすえに、真言密教の根拠地として定めた山上の聖地です。平安時代のはじめ、816年に伽藍の造営が開始されて以来、1200年になろうとしていますが、その間、いくたの盛衰を経ながら真言宗の総本山であり続け、仏教文化の発信地となってきました。密教美術の創造の母体であったというにとどまらず、皇族・武家など時の権力者による寄進や、戦乱をのがれて各地から集まってきた貴重な宝物の保管場所としての役割も引き受け、多様な文化財をまもり伝えてきた山岳霊場でもあります。「山の正倉院」と呼んでもいいでしょう。
2003年は、若き空海が唐に渡ってから1200年を迎える節目にあたります。今回の展覧会は、〈空海と高野山の歴史〉〈空海の思想と密教のかたち〉〈信仰の重なりとその美術〉〈山の正倉院〉〈近世の高野山〉という5つのテーマを設け、高野山の宝物の全容を眺めようと試みます。空海自筆の「国宝・聾瞽指帰」、空海請来の「国宝・諸尊仏龕」、日本仏画の最高傑作「国宝・仏涅槃図」をはじめ、運慶一門作の「国宝・八大童子立像」8体がせいぞろいするなど、山上の至宝を、空前の規模で展示します。この機会に、是非ご覧ください。