日本はもとより海外でも高く評価されている、浜口陽三・南桂子夫妻の作品を紹介します。両氏は戦後いち早く渡仏し、銅板画の技法にさまざまな工夫を重ね、独自の作品世界を展開しました。
浜口陽三は、永くヨーロッパでも忘れられた銅板画の技法のひとつ、メゾチントに着目し、これを蘇生させ、さらに色彩を導入することでカラーメゾチントを生みだし、版画の表現力を押し広げました。これにより、1957年にサンパウロ国際ビエンナーレで日本人として初の版画大賞を受賞し、以後、東京、ルガノ、リュブリアナ、クラコウなどの国際展において数々の賞を受賞し、日本を代表する国際作家として広く知られるようになります。
また、南桂子は、戦前より絵画制作の他、詩作や、童話作りなど多方面に活躍しますが、浜口陽三との出会いにより版画制作(エッチング)に集中します。パリの版画研究所での研鑚の後、詩情ゆたかな個性的な作品を次々に発表し、評判となります。その作品はフランス政府買い上げとなり、また1957年には、ニューヨーク近代美術館のクリスマスカードに採用され、さらに翌年にはユニセフ(国際連合児童基金)のカードになるなど、一躍世界に名を知られるようになります。
本展は、両氏の各時代の作品約240点を出品するとともに、お二人の作品との出会いによって生まれた、大岡信、谷川俊太郎両氏の新作を含む数篇の詩を紹介し、美術作品と詩の親和的な世界をご案内いたします。