浜口陽三(1909-2000)は20世紀後半、パリを拠点に活躍した銅版画家です。
ピカソやクレーなどを扱うベルグリューン画廊と出会い、国際的なコンクールで次々
と受賞を重ねました。深みのある黒を基調にした作品は、いつまでもその前でたた
ずんでいたくなるような、穏やかな静けさをたたえ、鑑賞者を魅了して止みません。
浜口が本格的に銅版画の制作を始めたのは1950年頃です。同じ自由美術家協
会の一員だった洋画家・森芳雄(1908-1997)のアトリエを間借りして、慣れない
版画と向き合う日々を送りました。つかの間ではありましたが、浜口が芸術家として
開花する時代を共にした森芳雄との交流を、本展では紹介します。浜口陽三の
銅版画他約50点と、森芳雄の油彩画6点、素描や資料による構成です。
戦前のパリで芸術を学び、戦後には新しい美術をつくりだそうと切磋琢磨した
二人。共に抱いた芸術への崇高な憧れを感じていただけたら幸いです。