モンゴル高原の一画に遊牧生活を営んできたモンゴル民俗は、13世紀に世界帝国を築き上げました。しかしその大帝国が瓦解すると、19世紀には清朝に支配され、清朝滅亡後にはソ連邦の強い影響を受けるようになります。しかし1991年から民主化の道を歩みはじめ、モンゴルは新たな時代に入りました。こうした歴史の変転を重ねてきたモンゴルの足跡を、絵画作品を通してたどってみると、その風土に根ざした文化の独自性のみならず、日本やアジア諸国に共通した近現代の課題が見えてくるようです。
遊牧生活を基盤とし、過酷な自然の力を受けながら育まれたモンゴル人の自然観は、かれらの美意識にも反映されています。それゆえに、自然とともに生きてきたかれらの作品群はどこか不思議な懐かしさを感じさせ、私たち日本人の共感もよびます。
この展覧会では、モンゴル国立近代美術館、ザナザバル美術館、モンゴル芸術家組合、および福岡アジア美術館の所蔵作品を中心に約100点の作品を展観し、モンゴル近代美術の流れを紹介します。