今回の美をめぐる旅は牛島憲之《雨明かる》が描かれた伊豆・下田からはじまります。伊豆の山を越えると《富士三保松原図屏風》に描かれた霊峰・富士を見ることができます。そして、富士山は遠くフランスで多くの画家を魅了しました。《雪中の家とコルサース山》を富士に見立てたモネをはじめ、ルノワール、ピサロ、ゴーギャン、ゴッホなど、多くの画家が日本の文化に影響を受けながら新しい風景を描き出しました。 また、美しいものは人々を内なる旅へといざないます。須田国太郎《筆石村》、レンブラント《三本の木》は時代も場所も異なりますが、どこか時間と場所を超えて見るものを内なる世界へと導くようです。そうした旅へのいざないは平安時代の仏像から、モーリス・ルイス《べス・アイン》の抽象絵画にも感じることができるでしょう。 伊豆の自然に囲まれた新しい上原美術館で、ジャンルを超えた美の世界への旅をお楽しみいただければ幸いです。