このたび、井原市立田中美術館では企画展「井原の近代日本画―文林、六峰、天波、芦仙の世界―」を開催いたします。
井原地方では、明治以降、すぐれた日本画家たちを輩出してきました。なかでも河合文林(1875~1912)、森六峰(1879~1946)、戸田天波(1880~1961)、井上芦仙(1872~1941)の四人は京阪、東京など中央画壇で研鑽を積み、帰郷してからは郷土文化の発展に力を尽くしました。若き日の彼らは、後に日本近代美術史に名を残す巨匠たちと交流し、互いに切磋琢磨しながら自己の芸術を探求しました。
河合文林は、井原における日本画の先駆者・河合栗邨の子として生まれ、京都で今尾景年に学び、端麗な花鳥画の名手として知られました。森六峰は「最後の南画家」とも言われた田能村直入の弟子となり、清雅で格調高い山水画の境地を築きます。東京美術学校に学んだ戸田天波は、橋本雅邦、寺崎廣業に教えを受け、人物画に卓越した技量を発揮しました。井上芦仙は円山四条派の絵画を修め、故郷の学校で美術教師として勤めながら画作に励みました。
本展覧会では、「井原の近代日本画」を代表する四人の画家――文林、六峰、天波、芦仙――がそれぞれ得意としたジャンルの作品を展観し、彼らの追求した芸術と地域文化への貢献をたどります。井原の地で花開いた、美しい日本画の世界をお楽しみいただければ幸いです。