竹工芸の作品は、しなやかで強靭な竹の特性を生かし、編組(へんそ)技術によって形づくられます。竹を割り、削って加工した多様な「線」は豊かな表情や質感を示し、作品に応じて選ばれ、巧みに用いられます。そして「線」の連なりは、構造と同時に装飾ともなり、空間を包み透かして立ち上がる竹の造形を創出するのです。
竹工芸が職人の技芸を超えて個人の表現として追求されるようになるのは大正、昭和期のことです。本展では、その時期に東京を拠点に活躍した飯塚琅玕齋(ろうかんさい)(1890‐1958)と大阪・堺を拠点に活躍した初代田辺竹雲斎(ちくうんさい)(1877‐1937)を中心に、琅玕齋の兄・二代飯塚鳳齋(ほうさい)(1872‐1934)、琅玕齋の息子・飯塚小玕齋(しょうかんさい)(1919‐2004)、そして二代竹雲斎(1910‐2000)、三代竹雲斎(1941‐2014)、四代竹雲斎(1973-)の作品約120点を展示します。
飯塚琅?齋は、兄・二代鳳齋のもとで家業として竹の仕事に従事するも二十歳半ばで独立し、若い頃から作家として芸術たる竹工芸を求めました。作風は多彩で創意にあふれ、竹の造形表現に大きな足跡を残します。
一方、初代田代竹雲斎は、江戸時代末期から明治にかけて流行する煎茶道の精神を基礎に、精緻に編んだ唐物風の制作で名を馳せました。同時に唐物を脱した独自の作風をも打ち出し、竹工芸の表現を前進させ二代以降へと繋ぎます。昨年襲名した四代には当館のシンボルであるガラスの手すりの螺旋階段に竹のインスタレーションを制作していただき、本作によって竹工芸の過去から現在、そして未来への繋がりを紹介します。
二つの家系の作家7人による竹の「線」による造形を通し、大正から現在までの竹工芸の流れとともに、その革新性をご覧ください。