1895年(明治28年)滋賀県大津市に生まれた小倉遊亀(おぐら ゆき)は、奈良女子高等師範学校(現在の奈良女子大学)に学び、教職に就きますが、絵に対する情熱絶ちがたく、25歳にして安田靫彦に師事、日本画家としての道を歩み始めます。31歳で院展に初入選し、以後毎年入選を重ね、画家として揺るぎない地歩を固めていきます。日本の伝統を重んじつつも、小倉遊亀は常に時代の清新な感覚を取り入れ、明るく生命感あふれる独自の世界を築き上げました。やさしいまなざしで捉えた静物や人物、とりわけ家族の姿は、慈愛に満ち、多くのひとの心をひきつけてやみません。
1980年には文化勲章を受章、2000年に105歳で没しますが、女性画家のパイオニアの一人として、その存在は近代日本画の歴史に燦然と輝いています。
画家の故郷にある滋賀県立近代美術館は国内最大規模の小倉遊亀コレクションを所蔵しています。本展は同館の全面的な協力のもとに、その珠玉の名品約50点を、画家の抱いた三つの愛―日本画への憧れ、身近なものに向けた眼差し、愛する家族の姿―を切り口に、初期から晩年にいたる画業の全貌を紹介するものです。