日本近代洋画壇を牽引する画家として活躍した中村研一(1895-1967)。戦後まもない、1945(昭和20)年の12月、50歳で小金井に移り住みました。自然豊かなこの地を愛した中村は、最晩年にいたるまで精力的に創作活動を行います。それまでの作品に見られたモノトーンの色彩は影をひそめ、近郊の風景から影響を受けたようにも思われる、明るい色彩へと画風は変化を見せました。さらに、花を生ける妻、陽光に包まれた自宅の庭、器に盛られた果物など、身近な人物や風景、静物をモティーフにした作品が多数生み出されます。これらの作品からは穏やかな雰囲気とともに画家の温かな眼差しが感じられます。中村にとって、かけがえのない日常風景は創造をはぐくむ場であったといえるのではないでしょうか。本展覧会では、所蔵作品の中から小金井移住後の作品を中心に、画家の日常風景を探ります。