ヨーロッパで磁器への憧れが大いに高まった18世紀、フランスでは1740年にパリ東端のヴァンセンヌに軟質磁器工房が生まれました。強大な権力を誇る国王ルイ15世の庇護を受けて、パリとヴェルサイユの間に位置するセーヴルへと移転した製作所は、王立の磁器製作所となり1769年には硬質磁器の開発に成功します。セーヴルは、フランソワ・ブーシェなどの宮廷に愛された画家や彫刻家を招き、また最新の博物学を反映した、知的で洗練されたデザインを生み出してゆきます。ルイ15世の寵妃ポンパドゥール侯爵夫人や、ルイ16世とその王妃マリー・アントワネットに多くの作品を納めたほか、外交上の贈り物としても用いられ、ロシア皇帝エカテリーナ2世をはじめとした王侯貴族を魅了しました。フランス革命の混乱を経てナポレオンが台頭すると、セーヴルは新古典主義の作品を製作します。19世紀半ばからの万国博覧会の時代には、流行の様式を代表する室内装飾家を起用して、テーブル・ウェアという範疇にとどまらせない作品へ展開しました。日本との交流では、20世紀初頭に外国人作家として初めて、沼田一雅が型の制作に携わったのは特筆すべきことでしょう。こうした芸術家とのコラボレーションは、ピエール・スーラージュや草間彌生などと、伝統的なテーブル・ウェアの製作と併せて現代も精力的に行われているのです。本展では、フランス宮廷により育まれ、時代と共に変化し続けてきた300年に及ぶ製作所の活動を物語る、セーヴル磁器都市の収蔵作品約130件をご紹介いたします。