もう一度、様々な物質と、いきいきとした会話をはじめよう ――。
国内外で膨大なプロジェクトを抱えつつ疾走する世界的建築家、隈研吾(1954~)。
古今東西の思想に精通し、「負ける建築」「自然な建築」などの理念を実践してきた約30年に及ぶプロジェクトを集大成して展観します。本展では特に、隈が仕事を通じて対話を重ねてきた素材に着目し、建築設計やプロダクトデザインなどの蓄積を、時系列ではなく主要なマテリアル(竹、木、紙、石、土など)ごとに分類・整理することで、“もの” という観点から概観を試みます。“もの” の開放によって、人の感覚や意識、そして環境を媒介する建築の可能性に迫ります。
建築とは、結局のところ物質である。物質と人間との会話である。世界という得体のしれない大きさなるものが、物質という具体的存在を通じて、人間と会話するのである。物質が違うと、会話の仕方も変わり、こちらの気分も大いに変わってくる。20世紀は、コンクリートのせいで、会話は固くなり、人間の表情もずいぶん暗くなった。
もう一度、様々な物質と、いきいきとした会話をはじめよう。
―隈研吾