今から10年前、一人の洋画家がこの世を去りました。その人の名は平田豊美、花人・河村敦子の実の妹にあたります。花人・河村敦子は、変化に富んだ日本の四季を心より愛で、活け花を通じ表現してきました。花器にいけられた花自体のフォルムのみならず、展示する場を意識した河村の活け花は空間を斬新にも、一新させる力を秘めています。本展では、そんな花人・河村敦子の《花を活ける》ルーツに迫ります。
河村の妹・平田は画家になることを夢みていましたが両親に反対され、40歳でようやく絵に向き合うことができました。しかしこれからという60歳に胃癌にかかり、61歳でこの世を去ります。最後まで筆をとり、短くも太く描き続けた彼女の生き様は、花人・河村敦子の心に強い影響を与えました。
平田は晩年、北海道の風景に惹かれ、各地を巡り作品を手掛けました。それは1995年、心機転をするために河村が訪れた地でもありました。強く邁進する姉の足跡が《生きたい》と願い筆をもつ平田の背中をおしたのでしょう。晩年の渾身の作品群はこうした姉妹の絆から生まれたものです。
そして河村は平田の没後、妹への想いを追体験する為に彼女の作品の取材地を巡ります。それは妹の通った道を辿り、そこで何を見て、何を感じたか妹の想いを紡ぐ旅となりました。河村から平田へ、そしてまた河村へと廻ったこの想いは、その後の河村の強い表現力となったのです。
花人・河村敦子の花には人の心に寄り添える優しさがあります。それは河村の辿った妹への追体験が形となっているからでしょう。本展は平田の没後10年、ようやく妹への想いと向き合う決心のついた河村の姉妹の絆、弔いの心を活け花に託し展開します。