都路華香(1870-1931)は四条派の流れを汲む幸野楳嶺門下の代表的な画家として、竹内栖鳳、谷口香嶠、菊池芳文とともに楳嶺門下の四天王と呼ばれ、際立った装飾表現により独自の個性を展開しました。竹喬美術館では平成19(2007)年の回顧展以降、平成21(2009)年に写生や草稿を交えた特別陳列により華香の近代京都画壇における特異性を紹介してきました。
華香作品の特徴は流動するような彩色表現です。この表現は《雲間明月図》(個人蔵)の雲や《紅富士》(個人蔵)の木々などに見ることができ、作品の装飾性を高めています。また、構図の面でも、説明的に全容を見せるのではなく、対象に迫って切り取り、限られた画面のシンプルなモチーフの中で、対象の持つ面白さを引き出します。《酔李白》(個人蔵)では頭を垂れてうたた寝をする李白と、手前で倒れた瓶子がユーモラスです。華香の非凡なセンスは現代の私たちにもモダンを感じさせ、アメリカなど世界でも高い評価を受けています。
近年、基準作の少ない華香の第1回文展《石清水》(竹喬美術館蔵)が新たに発掘され、画業の展開についても徐々に明らかとなってきました。この展覧会では写生・草稿などを含めた華香作品約40点と、同時代に活躍した上村松園、香嶠、芳文らの作品約20点を展示します。華香自身の作風の展開とともに、同時代の京都の日本画や同門に学んだ四天王らとの比較から、華香作品の特異性と魅力についてご紹介します。