フランスを代表するポスター作家、レイモン・サヴィニャック(Raymond Savignac、1907-2002)の展覧会を開催します。日本にも多くのファンをもつサヴィニャックのポスターは、はっきりとした色彩と可愛らしく、ユーモラスなデッサンで知られています。
サヴィニャックのポスター作家としての最初の成功は、1949年に同じくポスター作家のベルナール・ヴィルモと開催した2人展で、《牛乳石鹸モンサヴォン》の原画となる作品を発表したことにはじまります。本作がモンサヴォンのオーナーであるウージェーヌ・シュレールの目に留まり、正式に広告採用となったのです。この時、すでに40歳を過ぎていたことを考えると決して早い成功とは言えませんが、これを契機に1950年代から60年代にかけて、ルノー、ビック、シトロエン、ダンロップ、ミシュランなどフランスの錚々たる広告主を得、サヴィニャックの代表作となるポスターが次々に生まれました。
サヴィニャックの革新性は、フランスにおけるポスターの伝統を一新したことにあります。それまで、あくまでもポスターのエッセンスであった「ユーモア」を主役に据え、明快な造形とインパクトある色彩によって、道行く人々へ端的にメッセージを届けることに成功したのです。
本展は、これまでにない大規模なサヴィニャック展となります。代表作のみならず、大型ポスターや日本企業から発注されたポスター、また原画、スケッチ、当時のサヴィニャック・ポスターが貼られたパリの景観写真など約200点を、モチーフやテーマごとに分類し、紹介します。サヴィニャックの作品世界を楽しむと同時に、デザイン、広告のもつ使命について改めて考える場となれば幸いです。