日本における写真文化のセンター的役割を担うという美術館の基本的方針に基づき、東京都写真美術館では、毎春、初期写真に焦点を当てる展示を開催しています。2018年は「写真発祥地の原風景 長崎」を開催します。
日本の写真発祥地では、開国と同時に写真制作がはじまり、近代化の歴史は写真によって記録されました。写真の普及が早ければ早いほど、その土地の写真は多くなります。
海外に開かれた港町として栄えた“異域”長崎では、ピエール・ロシェ(Pierre Rossier)やフェリーチェ・ベアト( Felice Beato)などの外国人写真師が訪れて写真を制作しました。一方、上野彦馬(うえのひこま)・幸馬(さちま)兄弟、内田九一(うちだくいち)をはじめ、薛信二郎(せつしんじろう)、竹下佳治(たけしたけいじ)、清河武安(きよかわたけやす)、為政虎三(ためまさとらぞう)などの日本人写真師も誕生し、日本の写真文化が開花する核となりました。
本展では東京都写真美術館が収蔵する重要な上野彦馬「長嵜市郷之撮影』、内田九一『西国巡幸写真帖』および同撮影で日下部金兵衛(くさかべきんべい)が頒布した《(長崎パノラマ)》、フェリーチェ・ベアト『幕末アルバム』や『ボードイン・アルバム』(長崎大学附属図書館蔵)、伝・堀江鍬二郎(ほりえくわじろう)《上野彦馬像》 (日本大学藝術学部蔵)、『内田九一写真帖』(長崎歴史文化博物館蔵)等の写真作品のほか、川原慶賀(かわはらけいが)《長崎出島之図》 (長崎大学附属図書館武藤文庫蔵)、写真を原図に用いた青貝細工の《長崎風物図箱》、長崎版画、稀覯本の展示も予定しています。
長崎学に造詣の深い姫野順一博士(長崎外国語大学特任教授・長崎大学名誉教授)監修のもと、幕末・明治の長崎を東京都写真美術館の展示室に再構築しよす。
本展は、「明治150年」を記念するとともに、長崎大学附属図書館の幕末・明治期日本の写真データベース公開20周年を記念し、同館と共同で開催いたします。
なお、本展は長崎歴史文化博物館に巡回(5月19日~ 6月25日)を予定しています。また「写真発祥地の原風景」はシリーズとして展開し、今後、北海道編、東京編の開催を予定しています。