涅槃は釈迦(一説にBC463~383)の死を表す言葉として用いられ、仏弟子・諸菩薩・諸天をはじめ鳥獣達も駆けつけ、その死を悼んだといわれます。仏(ぶつ)涅槃図はその様子を絵画化したもので、沙羅双樹(さらそうじゅ)の林で頭を北に静かに横たわり、涅槃に入り入滅(にゅうめつ)した釈迦の姿や、周囲に集まって嘆き悲しむ会衆(えしゅう)の様子などが様々に描かれています。
平安後期に描かれた初期の形式では、両手を体側につけて寝台に横たわる釈迦の姿を大きく描きますが、鎌倉時代以降、宋画の影響を受け、釈迦の姿は比較的小さくなり、縦長の画面中央に右手を枕に横臥する姿を描き、周りに集う会衆も増え、鳥獣の数や種類も増えてきました。
釈迦入滅の日とされる2月(旧暦3月)15日には、真言宗や禅宗の寺院を中心に涅槃会(ねはんえ,常楽会=じょうらくえ)が催されます。涅槃図が掛けられ、「仏遺教経(ぶつゆいきょうぎょう)」(釈迦入滅直前の説法が記されているお経)などが読経され、法要が行なわれます。またこの日、赤・青・黄・白色などの米の粉で作られたネハンダンゴを魔よけとして参拝者に撒きます。
本展では、郷土の寺院に伝わる仏涅槃図・木彫の涅槃像・釈迦八相(はっそう)図(釈迦の生涯の八つの主要な出来事を描いた絵伝)などを中心に、釈迦の諸相や涅槃会法要の様子を展示紹介します。