和の感性が冴えわたる 着物の世界の理想郷―
四季の移り変わりにしたがって 次々と登場する和の植物
梅、桜、藤、かきつばたを主役にして、 日本の四季を謳歌する―
三井家着物模様こそ、日本の伝統文様の最高峰といえよう。
このたび文化学園服飾博物館は学園創立八十周年を記念し、新しい建物に移転することになりました。新博物館の最初の企画として「三井家の着物―江戸・明治・大正―」を開催いたします。
三井家は江戸時代には呉服商と両替商を営んで豪商と称され、明治時代から昭和戦前期には事業を拡大し財閥へと発展しました。当館は三井家に伝来した着物を多数所蔵し、それらは名品として高い評価を受けています。
三井家の当主夫人たちを華やかに彩り、隆盛をきわめた越後屋(現在の三越)の最高の顧客を満足させた着物の数々。デザインの高度な芸術性と、職人の完璧な刺繍の技との見事な調和。
そこには京都画壇の巨匠、円山応挙と彼を支援した三井家当主との関係を背景に、芸術家と職人、パトロンの理想のコラボレーションの実現が見られます。三井家の着物のデザインには円山派が深く関わり、等身大のものを含む下絵も数多く残されており、それらも紹介いたします。
日本の四季の植物や、松竹梅や鶴亀の吉祥模様を題材とし、円山派の得意とする写実性に基づいた下絵から、洗練された装飾性豊かな着物のデザインへと完成していく。その制作過程こそ、日本の文様表現の本流ともいうべきものでしょう。