平山郁夫が東北の地に訪れたのは、1959年の若かりし頃、東京芸術大学の副手時代です。当時は被爆による後遺症で悩み、体調も思わしくありませんでした。そうした状態の中で目にした奥入瀬渓流について、画家は「生きる喜びを心から教えてくれた」と言います。これ以降、平山は東北に惹かれて何度か取材旅行を行い、平成に入る頃には俳聖の松尾芭蕉を偲んだ≪奥の細道≫という素描シリーズを発表し、金華山や立石寺などを描きました。これ以降も中尊寺や毛越寺を描いた≪平泉≫の素描を発表するなど、画家にとって東北は思い入れのある場所でありました。本展では、これら東北の素描たちと共に、当館の誇る大作≪流水間断無(奥入瀬渓流)≫をあわせてご紹介いたします。