本展は、世界的な陶磁学者として知られる小山冨士夫(1900~1975)の古美術鑑賞の跡、陶芸家との交友関係、作陶の成果、そして古陶磁研究の業績を回顧する展覧会です。
小山冨士夫は中国定窯古窯址の発見によって一躍世界的に知られた陶磁学者です。日本中世「六古窯」の研究や正倉院蔵の奈良三彩の調査など古陶磁研究で数多くの業績を残した小山は、韓国や中近東、ヨーロッパの陶磁器にも深い造詣を示しました。研究以外でも、文化財保護委員として国宝・重要文化財指定の業務に従事し、現在の文化財制度の骨格を作り上げました。さらに、小山はその誠実で温厚な人柄から、石黒宗麿や荒川豊蔵ら「人間国宝」、そして北大路魯山人、川喜多半泥子など数多くの陶芸家とも幅広い交遊を持ちました。また、自らも陶芸家として、地域の伝統や約束事ににとらわれない自由な造形を追求し、その天衣無縫な作風は多くの人に愛されてます。
本展では、自著『骨董百話』などで取り上げられた六古窯や宋磁、朝鮮時代の陶磁の名品をはじめ、交遊のあった現代陶芸家の代表作品、小山の腕の冴えを見せる自作の陶磁器、そして研究資料など約110点を一堂に集めました。「陶の詩人」小山冨士夫の眼と技の世界を存分にご堪能下さい。