太平の世を謳歌していた幕末の江戸庶民は生活に余裕が生まれると、まだ見ぬ諸国の名所や名物に興味を持つようになりました。江戸の浮世絵師たちは、そのような要求に応えるべく、諸国に行けない人々のために名所を描きました。しかし彼らが、実際に現地で取材することはほとんどありません。絵師たちは、紀行本や名所記などを種本としながら、それらを独自の画風で表現して、江戸の庶民を満足させる作品を発表したのです。
本展覧会では、江戸の庶民がどのような名所に興味を示し、浮世絵師がどのように名所を描いたかを、各絵師の作品をとおしてご紹介いたします。