角川文庫の横溝正史シリーズのインパクトの強い表紙カバー絵を描いた人物は、銅版画にもすごい演出をしてくれる。前者のイラストと後者の版画が実は同じ人物が描いたものとは、誰が想像するだろうか。それぞれ別の人が描いたといっても不思議ではない。そんな世界を杉本一文は創り上げる。横溝正史による悍ましい文章表現を、表紙の中にたった一点で絵画として表現する。杉本の中に根強いている(或はイメージの内在化)神話や寓話的なものの版画表現。今回は杉本一文の世界として、この2つのイメージを中心に展覧する。 スパンアートギャラリー 種村品麻