平塚市美術館のテーマホールを用いた「ロビー展」は、2006年にはじまり、今回で11回を数えます。外光の降り注ぐ高さ11メートルの空間を舞台に、冬季実質100日以上の会期で若手や実力派作家に門戸を開放した観覧無料の展示となります。
長谷川さち(1982年兵庫県生まれ)は、武蔵野美術大学を卒業後、2006年に同大学院を修了しますが、在学時代から個展、グループ展に黒御影石、砂岩などの彫刻作品を発表してきました。
長谷川の彫刻作品は、日本古来から人々が見てきたであろう景色や営み、そして自然現象、畏怖すべき対象などを参照しており、魂の循環や不可視な世界の存在を、何千年と存在し続けている石を通して、この現代に交差させ出現させようとしてきました。
石に刻まれた無数の鑿(のみ)跡は、表面が空間に溶け込むようにも感じさせ、実在のものをモチーフとしながらも、移ろいやすく奇妙な物体として新たな形が与えられています。今回作家が冠したタイトル“レイライン”は、古代遺跡の直線的な配置性という意味以上に複雑なニュアンスを帯びて、我々に謎めいた問いを投げかけます。
ロビー展最年少、また全国の美術館で初の本格的な個展となる気鋭の作家が、高さ11メートルの展示空間と共鳴し、いかに対峙するかご期待ください。