複雑な技術社会のなかで、わたしたちは、全容もわからないままに技術がつくるシステムによって暮らしています。便利で快適な技術に囲まれながら、同時に技術が生む破滅的な困難をも目の当たりにしていると言えるでしょう。原発事故を経験したわたしたちは、いま一度、自分の身体の範疇から技術を捉え直してもよいのではないでしょうか。その一助となるのが芸術と呼ばれるものかもしれません。芸術は、個人が社会のさまざまな局面と向き合いながら、なお前向きに生きていくために、身体によって開発した技です。ところが、わたしたちは、芸術を社会から切り離して特別視しながら、他方では商品や政策のように、現状肯定の手段としていないでしょうか。おそらく、技術と同時に芸術についての検証も必要なのです。そうすることで、いまの社会に切実な「生きる技法」が浮かび上がってくると思われます。
本展は5人の美術家が、語源を同じくする技術や芸術への考察をとおして、未知なるものや自然への畏怖心と、手探りのおかしみや人の技に宿るユーモアをあらわし、困難を抱えた社会のなかを積極的にさまようための術と活力をつたえようとするものです。