笠岡市立竹喬美術館では、これまで小野竹喬を中心として、京都の近代日本画をテーマとした展覧会を数多く開催してきました。また、竹喬とゆかりのある近世の四条派にも焦点をあて、竹喬芸術の礎となった四条派の系譜に連なる画家たちについても検証してきました。
竹喬は、自然に対する眼差しを常に持ち、その息吹きを看取して、自己の芸術へと昇華しました。しかし、竹喬芸術は、師である竹内栖鳳を経由した、近世から近代へ脈々と継承された四条派や、近世京都画壇の流れを汲んでおり、近代京都画壇を語るうえで、このことは等閑できません。
江戸時代が終焉し、文明開化を迎え、西欧から文物や思想が一気に流入したことも相まって、明治時代の終わり頃には、新たな日本画の創造を目指すさまざまな動きが現われてきます。このように、過去から現在へ、そして未来へと継承されていく日本画史の潮流の中で、時代を隔てるのではなく、近世絵画も包含して多角的に見ることは、近代日本画を理解するうえで、一番の近道になるのではないでしょうか。
数ある個人コレクションの中でも、春星館コレクションは、近世から近代へと連綿と続く日本画史を紐解くうえで、必要不可欠な作品を網羅しているコレクションといえます。美術史家として活躍中の春星館主人の洗練された視線を通じ、選りすぐられた作品群には、個々の画家の秀作といえる作品が揃っています。
このたび笠岡市立竹喬美術館では、この春星館コレクションの中から、近世・近代の京都画壇を彩った画家たちの作品をご紹介します。近世の松村月渓(呉春)、岡本豊彦、横山清暉、近代の幸野楳嶺、山元春挙、西山翠嶂など、美術史家の視線を通して蒐集された作品85点を一堂に会することで、近代日本画の底に流れる美意識を発見していただければ幸いです。