「没後50年 中村研一展」―光と影を生きた画家。
このたび福岡県立美術館では、昭和期の官展アカデミズムを牽引したことで知られる洋画家の中村研一(1895-1967)の没後50年の節目に、作家ゆかりの地にある宗像市、新居浜市美術館と連携し、「没後50年 中村研一展」を開催いたします。本展は、彼の没後まもなく開催された遺作展(1972年、福岡県文化会館)以来、福岡の地で開催される実に45年ぶりの大規模な回顧展です。
中村研一は宗像市出身、東京美術学校西洋画科を卒業したのちフランス留学を経て、帰国後は帝展で受賞を重ね、戦後の日展に至るまで審査員を歴任するなど、昭和期官展洋画の中心的存在として活躍しました。正確なデッサンと端正な筆致で造形的に構築された大画面作品を得意とし、作家として全盛期を迎えたと言われる戦争画などは中村の真骨頂として評価されています。本展では、戦前期の官展や戦後の日展に出品した代表作や戦争画を紹介するのはもとより、生涯愛着を持ち続けた宗像や新居浜というゆかりの場所を主題とする作品も含めてその画業を再考し、彼が生涯追求し続けたリアリズムとはいかなるものであったのかを検証します。正統な写実に貫かれた風格あふれる絵画は、彼が生きた近代という激動の時代の中でも時流に流されることなく追求し続けた「絵画の真実」として、今を生きる我々にも時代を超えて訴えかけてくることでしょう。