タカ・イシイギャラリー東京は、11月25日(土)から12月22日(土)まで、小野田實の個展を開催いたします。タカ・イシイギャラリーでの初個展となる本展では、60年代の初期作品から90年代後半の晩年の作品まで、小野田の50年に及ぶ創作活動を俯瞰する、合計11点のペインティング作品を展示いたします。
私が新しいメンバーに期待するものは、且ってのグタイ展に於いて、前人の轍をあえて踏もうとしなかったが故に、世にも不思議な作品を誇らしげに示していた先輩達の姿と、等質の不逞さと謙虚さにある。グタイグループという坩堝の中に溶け込んだものから、いくつかの思いがけない派生が今も尚次々と昇華していく不思議さに私は今更のように驚いている次第である。
吉原治良『具体』14号(1965年)より
1960年代、ミシェル・タピエの擁護のもとに確立された具体のアンフォルメル・スタイルは、徐々にその新鮮さを失いつつありました。この状況を打開するため、吉原治良はこれまでの具体とは明らかに作風の異なる作家たちを65年に新会員としてグループに迎え入れます。小野田はこの第三世代と呼ばれるメンバーの一人で、彼らの作品は大量生産・大量消費時代を反映した、新しい抽象を志向するものでした。
60年代の小野田の絵画は色とサイズの異なる無数のマルで構成され、胡粉とボンドを混ぜ合わせたペーストを下地として支持体に盛ることで、その画面は有機的な起伏を持ちます。高度成長期のこの時代、真空管などの工業部品が機械的に大量生産される様を客体化するため、小野田はマルで画面を覆い尽くし、自身の作品を「繁殖絵画」と名付けました。その後小野田の絵画は更に抽象化し、70年代に入るとマルは正方形のキャンバスの中央に置かれた真円に集約されます。形態をシンプルで普遍的な円に絞ることで想像力や偶然の介入を防ぎ、まるで観念的な要素を画面から排除するかのようです。