秦テルヲ(1887-1945)は広島に生まれ、明治37年京都市立美術工芸学校を卒業すると、千種掃雲らの丙午画会や土田麦僊らの黒猫会(シャ・ノワール)に参加し、新しい日本画の研究に新進画家らしい活発な活動を展開しました。しかし、大正期にはいると画壇から離れ、大阪、神戸、東京に漂泊生活を送りながら、個展によって作品を発表し続けました。労働者や現代風俗からカフェの女給や娘義太夫、新吉原や浅草一二階下の女など、社会の底辺にうごめく女性の姿を表現主義的手法で描くて、人生や社会の暗部を暴き、弱者への共感と同情を示しましたが、大正9年に子供が生まれたのを機に京都に戻り、作品も次第に宗教的傾向を深め、やがて仏画に専念するようになりました。本展では、テルヲと、彼と交遊のあった竹久夢二、野長瀬晩花、戸張孤雁らの作品、あわせて約150点によって秦テルヲの芸術の軌跡と彼が生きた時代を辿ります。