ヒノギャラリーでは2017年11月13日(月)より「須賀昭初展」を開催いたします。
1970年代、作家として活動を始めた頃の須賀は、角材や鉄板などを用いたインスタレーション作品を主に発表していました。その後ほどなくして、当時ではまだめずらしかったコットンのロウ(生の)キャンバスに出会います。この素材が持つ物質としての魅力に一気に引き込まれた須賀は、それを用いた創作、つまり平面作品に取り組むようになりました。
その契機どおり、当初須賀はこのキャンバス(生地)の持つ輝きをどうすれば活かせるかを試行し、その結果、画面に一切手を加えない地の面と、透明メディウムのみを塗り重ね、わずかに黄褐色へと変化した面とで構成された作品を発表します。しかし、そのように素材から着想を得て創出された画面は、極めて純粋であるがゆえに、絵画の発展に欠かせない「色彩」そして「描く」という問題を徐々に露呈し、長く作家を苦しめることになります。とはいえ、須賀の物質への興味は削がれることなく、むしろそこを拠り所とし、この立ちはだかる難題に挑んでいきました。
90年代後半、色材がゆっくりとロウ・キャンバスに染み込む感覚を体得した須賀は、その上から透明メディウムを塗り込み、十分乾いたあと今度はそこへ一気に色を重ね、また拭きとったりといった手法で、形態、そして空間を擁した画面を出現させることに成功しました。素材や色材がもたらす思いもよらぬ反応はまた、作家を即物的な境地へ追い込み、結果「描く」行為を導き出す一助にもなったのです。
今回発表する新作の中には、当時と同様のプロセスでつくり出された作品があるといいます。作家はそれを再制作というかたちではなく、さらなる追求と位置づけています。試行が画面を生成する須賀の作品にとって、それは然るべきアプローチであり、また新たな展開へと踏み出す一歩であるともいえるでしょう。
ヒノギャラリーでは3年ぶりの個展となります。還元しながら進化を遂げる須賀昭初の絵画を是非ご高覧ください。