風はどんな音がするのだろう。そう思っていくら耳を澄ましても、聴こえるのは私の耳の周りで鳴る風の部分が作り出した音だけで、私の視界に広がる目に見えぬ風の造形とは違うものだった。私が知りたいのは風の全体の音であり、形である。風はどんな形でどんな音をたてているのだろう。
本展覧会「A Wind」では、18箇所で同時に録音した風のノイズをそれぞれ18個のスピーカーから出力する装置を制作し、「私」という知覚の限定がなければこの世界はどのような姿として現れるのかを捉えるための試みである。一つ一つの風の音は私たちのよく知るものであるが、それが集合した時にどのような音が発生するのだろうか。その音は私たちに聞こえないだけで常にこの世界で鳴っている音である。