10月-11月のTARONASUではアレッサンドロ・ラホによる個展「Jessica」を開催します。ラホは家族や親しい友人を描いた肖像画、身近な場所を描いた風景画で知られてきました。本展は、妹であるジェシカの肖像画7点によって構成されます。
アレッサンドロ・ラホ| Alessandro Raho
1971年バハマ生まれ。ロンドンにて制作、活動。94年にゴールドスミス大学を卒業後、ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ、ミラノなど世界各地で個展を開催。YBAのひとりとして、ダミアン・ハースト等と共にウォーカー・アート・センターでの”Brilliant!"に出品するなど、多くの重要な展覧会に参加。
現代における肖像画の可能性を追求するラホは、対象となる人物の写真を撮影し、その写真を元にキャンバスに図像を描く手法を採っています。白い背景の中央でポーズをとる人物。普段通りの服装をしているように見えますが、黒いタイツからハイブランドのドレス、キャラクターTシャツまで、実際はほとんどが作家によって選ばれたものです。ラホは明らかにファッション写真の手法を参照し、作品の中で視覚的に言及しています。
ファッション写真は、肖像画の伝統を現代的に引き継いでいると言えるでしょう。肖像画は、書かれた人物の地位を表明するために発注され、華美な背景や衣服といった要素を利用しながら描かれてきました。ハイブランドのロゴが描かれたTシャツを気負わず着て、こちらをみすえるモデル。ファッション写真もまた、衣服やそれを着る人物の価値を表明するために、社会的な記号の働きにより入念に演出されているものです。
ラホの作品において被写体に選ばれているのは、親しい知人や家族です。カメラに向けて自然な笑みを浮かべるモデルとは対照的に、彼らは緊張し、どこかぎこちない表情を見せています。ラホが画面に描き出すジェシカの姿は、様々な記号や価値付けに囲まれた、現代を生きる私たちの姿でもあるのです。