「強がり屋で淋しがり屋、そしてやさしく面白く、とっても忙しい人でした。次々に新しいことを考え出しては皆をおどろかせていました」
中村正義夫人あやが、夫の没後20年余りのちに刊行した本のあとがきの中の言葉です。52歳という若さでこの世を去った中村正義(1924-1977)は、戦後の日本画壇に一陣の突風を巻き起こした異色の画家でした。若くしてその才能を高く評価され、日展の将来を担う逸材と嘱望されながら、組織の制約や表現の不自由に異議を唱え、既存の枠組を飛びだし、破壊的なまでに自由を追求したその後半生は、まさに風雲児という言葉がふさわしい活躍ぶりでした。一方で、人を喜ばせることが好き、と自ら語るように、繊細さと大胆さ、そして独創性を併せ持つその人柄は、周囲の人々を楽しませ、驚かせ、そしてひきつけました。今年は戦後の日本画壇を疾走したこの異才の画家の没後40年にあたりますが、これを記念して中村正義と彼をめぐる画家たちを紹介する展覧会を開催します。中村正義とは同郷で、ほぼ同世代の画家として早くから互いに切磋琢磨した星野真吾と平川敏夫。中村正義を師と仰ぎ独自の作風を築き上げた岸本清子と水野朝。この4人の作家と中村正義との関係を作品を通じてご覧いただきます。