タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムは、11月18日(土)から12月22日(金)まで、今井智己個展「Remains to be seen」を開催いたします。タカ・イシイギャラリーで4年ぶり、3度目の個展となる本展では、2014年以降に撮影された作品群から13点を展示いたします。
今井は、写真を通じて「見ることとは何か」という問いに絶えず真摯に向き合ってきました。日々眼前に広がる世界を見つめ、被写体そのものの存在感に惹きつけられるように視線が自然と赴くものを捉えながら、今井は常に見るものと見えてくるもの、意識と無意識、自己と他者との視線の狭間を丁寧に感じ取り、その時、その場所と対峙しています。
視覚的な記憶をくまなく閲覧できるアーカイブが自分のなかにあるとしたら、まずはじめに、そこにはまだないものを選ぶ。次に、そこにはおさまるべきところがないものを選ぶ。自分が撮る写真は、記憶の棚におさまりようもなく床にこぼれ落ちたものです。
これといって分類名のない時間や場所の、とるに足らないありふれたもの。それらへの信仰告白のような態で、棚を前にして、収蔵庫の床からしずかに写真をひろいあげ続けているのかもしれません。
秩序立って記憶されていくものと忘れられていくもののあいだ。アーカイブとゴミ箱のあいだ。わかるものと関心がないもののあいだ。
それを知っている。見たことがある。でも名前がない。言い当てることもできずにわからないままのその記憶にはただ、あとすこしでわかるという予感だけがある。そういう写真を撮っていると思っています。
2017年9月 今井智己