日本の山河をこよなく愛し、豊かな自然とそこに暮らす人々の姿を叙情豊かに描き出した川合玉堂(かわいぎょくどう)(1873-1957)。山種美術館では、没後60年記念し、玉堂の画家としての足跡をたどり、その芸術世界を紹介する回顧展を開催いたします。
玉堂は、京都で学んだ円山四条(まるやましじょう)派の基礎の上に、狩野(かのう)派の様式を取り入れ、さらに各地を訪ねて実際の景色に触れることで、伝統的な山水画から近代的な風景画へと新たな境地を拓いていきました。また、官展で審査員をつとめ、帝国美術院会員となる一方、東京美術学校教授、帝室技芸員に任ぜられるなど、東京画壇における中心的な役割を果たし、1940年には文化勲章を受章しています。戦後は疎開先であった奥多摩にとどまって晩年を過ごし、大らかで温かみのある画風を展開させました。
本展では、初期の《鵜飼(うかい)》から、大正期 の《紅白梅(こうはくばい)》、円熟期の《彩雨(さいう)》晩年の牧歌的な作風を示す《早乙女(さおとめ)》まで、代表作を中心とする名作の数々とともに、玉堂の長年にわたる画業をご紹介します。他の画家との合作や、玉堂の詠んだ詩歌が啓かれた作品をとおして、家族や親しい芸術家との交流にもスポットをあて、素顔の玉堂の魅力をお楽しみいただきます。