「アートの今・岡山」は、岡山における現代美術表現の「今」の姿を紹介する企画展です。
開催12回目となる今回は、日本の伝統技術「表装」の現代における新たな可能性に注目します。
古くから日本人の暮らしを彩り、書画を保護するための「表装」という技術があります。中国から伝えられた表装は日本文化の中で独自の発展を遂げてきました。長い歴史の中で様々な技術や美意識が培われ、それに伴い和紙や木工芸などの産業も発展してゆきました。日本の表装文化は、地域の風土や産業と密接に結びつき育まれてきたのです。しかし現在!日本人の暮らしの変化に伴い、表装は日常から切り離された特別な存在となりつつあり、技術を支える伝統産業と共に存続が危ぶまれる状況です。
一方で、書画を彩り引き立てる表装は、作品と一体化した表現として、画家や文化人によって様々な試みがなされてきました。竹久夢二は伝統的な日本画の技法を用いて新しい時代のスタイルを築きましたが、その精神は表装にも存分に発揮されています。表装の中に保たれてきた普遍的な美や機能性も、時代を切り開くクリエイターや新しい技術とともに進化を遂げてきたのです。
本展では、岡山の表具師と新進アーティストが、ともに考え対話を重ねながら現代美術と表装との融合を試みました。互いの表現や技術に対して「はじめまして。」の関係から始まる新しい創造。瑞々しい感性と伝統的な装いが織りなす洋魂和才の表現をご覧いただきます。
なお、天神山文化プラザ会場では本展による新作のみを展示し、夢二郷士美術館と連携開催します。その後、新見美術館と勝央美術文学館では、天神山文化プラザ展示作品とともに、竹久夢二作品(夢二郷土美術館所蔵)と各館収蔵作品が「表装」をテーマに競演します。地域によって異なる古今の挑戦をお楽しみください。