華鴒大塚美術館では、開館以来、日本の歴史や伝統に基づく様式や表現を汲んだ絵画や関係する画家などの紹介につとめて参りました。このたび、当館の新しい取り組みとして、活躍が目覚ましい現代・いまを生きる美術作家を紹介する展覧会を開催いたします。1回目となる本展は、井原市在住の画家・上西竜二を紹介します。
上西は、岡山大学教育学部特別教科教育養成課程美術専攻を卒業後、広島市立大学大学院絵画専攻(油絵)に進み、野田弘志の指導を受け、修了制作展では優秀作品に贈られるプリ・ラ・ジュネス賞を受賞しています。その後は、岡山や広島を中心に、大阪、東京で個展を重ね、2008年には岡山県ゆかりの新進気鋭の美術作家に贈られるI氏賞奨励賞(第2回)を受賞し、大きく注目を集めます。
上西作品の魅力はなんと言っても繊細で精微な写実表現にあり、自身が求めた真実(リアル)の形が示されます。だからこそ作品は、絵空事では終わらない真実と世界観、真実以上の美しさで見る者を圧倒的な力でひきつけけます。
上西にとって描くこととは―。氏の言葉によれば「単純に強い極めて自然な純粋な気持ち」「単に自分の意思に従っているだけ」。つまり描くことは、日常を生きることに他ならないと言います。
現代の美術のなかの視覚表現として写実絵画が注目を集める今、上西は高い技巧による描写力と優れた質感表現、機知的で大胆な構図で存在感を示しています。40歳を超えた上西にとって今後、「描く」という不変の行為はどのように展開するのでしょうか。
本展では、これまでの主力作品に新作を加えご紹介します。描くことの高い技術力はもちろんですが、描くことに正直で、純粋な上西の言葉にも触れていただき、いまを生きる画家が真摯に自らの表現を追い求める姿と、画家が表現すぅる創作という行為についての理解を深める機会になればと思います。どうぞご期待ください。