土門拳(1909-1990)は、京都や奈良の古寺を訪ねた「古寺巡礼」をはじめ、著名人たち の肖像をとらえた「風貌」、原爆の悲惨さを世界に訴えた「ヒロシマ」、離職者、失業者 にあふれる炭田地帯に取材した「筑豊のこどもたち」などのシリーズで世界に知られる 写真家です。写真におけるリアリズム表現を追求し、戦後日本の写真界に多大な影響を 与えました。
本展は、土門拳の生地、山形県酒田市に位置する土門拳記念館のコレクションのなか から、代表作85点によって、その多彩な活動を紹介するものです。あわせて、毎年優れた功績を残した写真家に贈られる土門拳賞(毎日新聞社主催)の受賞作家のうち、長倉洋海、南良和、本橋成一、水越武、金村修の5名を取り上げ、土門拳記念館に収蔵される受賞作品40点を展示いたします。対象も表現も多様な作品のなかに、土門拳の写真美学 が確かに引き継がれていることをご覧いただけると思います。
写真表現の変転著しい現在、その源流の一つとして、改めて土門拳の業績を振り返る 貴重な機会となるでしょう。