“茶道具”と聞いて、真っ先に思い浮かぶものは何でしょうか? 茶碗でしょうか、それとも茶入、掛軸、釜、花入、水指、棗を思い浮かべるかもしれません。それらを一つ一つ見てみると、焼き物であり、紙に書かれた文字や絵であり、金工、漆工芸であったりと、その種類は様々で、茶の湯の道具と呼ばれているものが、多岐に渡っていることがわかります。茶の湯の愛好者はそれらの道具を収集し、集めた道具を用いて趣向をこらした茶会を開き、招いた客をもてなしたのです。
こうした道具の収集には、コレクターによって様々な特徴が見られます。好みの作者によって作られたものや、特定の種類の道具を多く買い求めたり、作られた産地にこだわった収集家もいました。逸翁のコレクションでは、比較的中国陶磁の作品が多く見られます。これは自身が参加していた、中国陶磁を研究する茶会の影響が考えられ、一度も休まずこの会に出席していたことからも、中国陶磁を収集したことへの熱意がうかがえます。そしてもう一つは、西洋美術の収集です。青年の頃から洋食を好み、洋館に暮らして洋風生活を送っていた逸翁にとって、ガラスの器やマイセンの焼き物などを買い集め、それらを茶道具として取り入れたことは自然な成り行きでもありました。伝来の道具にこだわらず、その独自の視点で茶道具を収集した逸翁のコレクションはこうして形成され、現在の逸翁美術館所蔵品の礎となっています。
この第三幕では、茶席で用いられる様々な道具を取り上げ、これまで出品機会の少なかった作品にも注目して展示します。収集家(コレクター)逸翁の世界をご覧下さい。