奈良県立万葉文化館における154点の館蔵品「万葉日本画」は、開館当初に当代随一の画家に制作を依頼し、4,500首余りある万葉歌の中から一首ずつ歌を選んで描かれた作品です。視覚から『万葉集』に収録された歌の世界を楽しむことのできる、他に類を見ない作品となりました。当館ではこの「万葉日本画」を核として、日本画を中心とした展覧会や公募展を開催してきました。
「日本画」という言葉は、西洋文化が一気に流入し価値観が大きく変動した明治時代に、「西洋画」と対になる概念として生まれたものです。
戦前の西洋文化の普及と、戦後の敗戦によって西洋画がもて囃されるようになり、日本画は衰退の一途を辿りました。その再興を図ったのは、明治・大正・昭和と長い年月を経て、模索を重ねてきた重鎮の画家たちです。彼らは日本画壇に存在する派閥に属したり、もしくは新たに派閥を立ち上げるなどして、切磋琢磨し後進の育成に励むことで日本画の技術を廃れさせることなく現代まで引き継いできました。「万葉日本画」を手掛ける画家たちは、そうした流れを汲んでいます。
本展は、「美人画100年の系譜美の継承―万葉日本画へ続く流れ」と題し、京都市美術館所蔵の名品より、代表的な題材として脈々と描かれてきた「美人画」に焦点を当て、 日本画壇の衰退と再興を経験し近現代へと日本画を継承してきた画家たちの歴史を辿るものです。
また、館蔵品画家らが受け継いでさた日本画壇の流れとともに、関連画家の万葉日本画も併せてご紹介します。