ガラスは、4千年ほど前のメソポタミアで作り出された、人工の工芸素材です。弥生時代から古墳時代の墓から中国製や西アジア製のガラス製品が出土し、正倉院にはペルシアのカット・ガラスが納められているように、早くから日本へも伝わってきました。戦国時代には、中国を経由してヨーロッパのガラス容器までもが運ばれてきましたが、我が国独自のガラス文化が成立・発展するのは、17世紀前半から半ば以降のことです。
和製吹きガラス「びいどろ」は、長崎に始まり、大阪や京都、江戸に広まっていく中で、日本特有の感性に育まれながら、実に多様な生活道具が作られるようになりました。19世紀に入り、ヨーロッパ製の上質なガラスに近いガラスが作られるようになると、精緻な切子装飾を施した「ぎやまん」が普及し始めます。中でも薩摩藩の切子ガラスは、大名の贈答品として、珍重されました。
本展は、瓶泥舎びいどろ・ぎやまん・ガラス美術館(愛媛県松山市)が所蔵する、美しい和ガラスコレクションから、盃や徳利、皿や鉢といった贅を尽くした飲食器をはじめ、簪(かんざし)や櫛などおしゃれのための道具、金魚鉢や虫籠や吊り灯籠や屏風に至るまで、現在では見られなくなった、和のガラス製品を紹介します。
江戸の数寄者たちの美意識を反映した、粋なガラスを存分にお楽しみください。