私たちは風景と向き合うとき、そこに何を見ているのでしょうか-。
古くから画家たちは風景を描いてきました。理想的な風景や身近な風景、また詩情あふれる田園風景や都市風景などをテーマに、画家たちは多くの作品を残しています。特に自然を愛し、親近感を抱いている中国や日本では、自然の景色を描いた山水画は、人物画・花鳥画とともに主要な絵画部門として、描きつがれてきたのです。
これに対して西洋では、ルネサンス以降初めて独立した風景画が描かれるようになったといわれています。そして19世紀には外光派、印象派の画家たちが、自然の明るい輝きを画面に見事に捉えた作品を多数残しました。
今回の展覧会では、練馬区立美術館の収蔵作品から風景画を集めました。
しかし風景画といってもその表現は多彩です。科学的な観察に基づいて自然を写生した作品もありますが、作者自身の心の中の風景や、自然と人間の関わりを描こうとしたものもあります。また手法も、油彩画、水彩画、日本画と多様です。
この展覧会では、画家と風景のさまざまな関わりを、明治から現代の風景画を比較しながら鑑賞していただいた上で、独自の抽象的な風景の世界を描いた小野木学(洋画、1924-1976)と、荒涼とした北国の風景のなかに人間の光と闇を描き続けた小野具定(日本画、1914-2000)の作品をまとめて紹介いたします。
画家たちの描いた「風景」を前にして、皆さんの眼と心に立ち現れる「風景」とはどのようなものでしょうか。風景とその表現の意味を改めて見直していただく機会となれば幸いです。