古川美術館では、現代洋画界を代表する藤森兼明の世界をご紹介します。
1935年富山県砺波市に生まれた藤森は、金沢美術工芸大学油彩科にて高光一也に師事し、就職を機に名古屋に転居、現在まで日展、光風会を主として活躍しています。人間の内面を人物画に投影した精神性の深い作風は高い評価を得ており、2004年日展にて内閣総理大臣賞受賞、2008年には日本藝術院賞を受賞され、同年日本藝術院会員に就任されました。現在は日本藝術院会員、日展顧問、光風会副理事長を務めています。
「祈りの美」をテーマとした2012年に続く第二回目となる本展では、幼い頃から一貫して描き続ける「人の姿」と、藤森の類まれなる表現力に焦点をあてます。新発見となる高校、大学時代の自画像は、最も身近な人の形。家族や友人など身近な人々を描いた画業の初期作品から、近年の荘厳な祈りをテーマとしたアドレーションシリーズ、そして世界的なアーティスト喜多郎を描いた2016年日展作品まで、人の姿を辿りながら画業の軌跡を展覧します。
また、本展では、圧倒的な存在感を放つ藤森の中世キリスト教の壁画と現代女性の肖像とを対峙させたその荘厳な作風が形づくられた創作のひみつを紐解きます。画家の取材したビザンチン聖堂などの写真や、力強い作品を生み出す礎として、学生時代から日記のように日々取り組んだ膨大なデッサンもあわせてご覧いただきます。藤森のデッサンは、勢いのある線で表され、空間や女性の個性も感じさせる正確さと、洗練された魅力にあふれています。デッサンや技法、画材などあわせてご覧いただくことによって、魅力ある作品を生み出す原動力や精神性、確かな高い技術力に基づく藤森兼明の創作の真髄に触れていただければ幸いです。