鏑木清方の芸術の豊かさの一つに、日本の近代文学との深いつながりがあります。
清方は、少年の頃から文芸雑誌を愛読し、特に樋口一葉、泉鏡花の小説に魅了されました。挿絵画家を志す若者にとり、憧れの小説家の挿絵を手がけることは大きな目標となりました。夭折した一葉との対面は果たせませんでしたが、後に鏡花と深い交友をもち、鏡花の師尾崎紅葉の知遇も得ました。そして、こうした文学者たちとの交流により挿絵画家として成長していきました。
日本画壇で活躍するようになってからも、度々文学に取材した作品を描き、さらに小説の人物の魅力を美人画の人物表現に生かすなどし、晩年まで、創作の源泉として文学への親しみを持ち続けました。
本展覧会では、清方の画業における近代文学との関わりを浮き彫りにし、文学に関連する作品を中心に美人画もあわせてご紹介いたします。