鏑木清方は、正月を迎えると氏神様や七福神へ詣でたり、書き初めをしたりして新春の吉事や慣わしを楽しみました。
正月二日の仕事始めには、硯や絵具皿を清めて心新たに絵を描き、弟子の伊東深水や寺島紫明らとの新年会の為に、肉筆の羽子板も用意しました。そして、身近な人々と新春を祝うだけでなく、正月で賑わう街やそこに集まった人々の様子を取材し、趣豊かな作品を描きました。また、明治から昭和にかけての東京の正月など季節の風物を随筆に書き残しました。
本展覧会では、新春の風情を描いた作品や口絵、清方作品をもとに名押絵師・永井周山が意匠化した押絵羽子板《明治風俗十二ヶ月》なども展示し、正月を祝う清方の心情を随筆から紹介いたします。