アートコートギャラリーでは、具体美術協会の主要作家として知られる前川強(1936 -)の出版記念展を開催いたします。
本展は、前川強の1960年代~70年代の活動に焦点をあてた作品集『MAEKAWA』(2014年)、『MAEKAWA II』(2016年)の出版を記念するとともに、その作品の魅力を改めて関西の地からお伝えする機会として企画しました。1950年代の最初期(「具体」入会前)、1970年代の作品(「具体」解散前後)、そして2017年の新作による構成で、世界のアートシーンで注目を集める現代美術家・前川強をご紹介します。
前川は1959年、第8回具体美術展に初参加し、1962年より同協会の会員となりました。60年代の「具体」期の前川は、織り目の粗いドンゴロス(麻布)を力強く隆起させて支持体とした絵画作品で知られています。さらに布や紐、ロープを張り合わせるなど自由な発想で創作を続け「具体」の第二世代の中心的な作家として注目を集めました。「具体」解散後の70年代、前川は多様な“縫い”の技法によって新たな絵画空間を探求し飛躍を遂げ、国内で多数の賞を受けました。前川は「素材の違いや囲う方法によって生まれる新しい空間にいつも興味がある」と語り、半世紀を超えて新たな絵画表現に向けて挑戦を続けてきました。
2016年から今年にかけて、テート・モダンでのコレクション展「The Disappearing Figure: Art after Catastrophe」に続き、サーチギャラリーでは前川の大規模な個展(いずれもロンドン)が開催されました。続いて、前川の60~70年代の作品を中心に据えた「Beyond Matter」展(ガゴシアン、サンフランシスコ)では、同世代の作家としてフォンタナやカステラーニと共に前川の鮮烈な試みがグローバルな文脈で紹介され注目を集めました。その他にもアジアでの個展やグループ展、コレクション展など、近年の展覧会を通じて前川は活躍の場をさらに広げ、評価が一層高まっています。
アートコートギャラリーでは、『MAEKAWA』『MAEKAWA II』所収の論考、インタビュー等の日本語訳冊子を編集・出版し、本展会期中に出版記念イベントを行います。多くの皆様にご高覧賜りたく、ご周知とご参加をよろしくお願い申し上げます。